Apple WatchとIoH革命

Apple Watchの販売が近付き様々なメディアで取り上げられる機会も増えてきました。一部では腕時計としてのステイタスや高級感、重厚感に欠けており、それほどは普及しないだろうという見方もあります。それも一理あるのですが、僕は今すぐではないにせよ、いずれ近いうちにこの手のウェアラブルデバイスがiPhoneのように市場を席巻する日は必ず来るだろうと思っています。

Apple Watchを腕時計としてみると確かにオモチャ感が拭えないのでいい年をした大人がするには抵抗があるかもしれません。でも僕から見るとむしろいい年をした大人あるいは年配の人間こそApple Watchをこぞって買うようになる日が来るのではないかと思っています。それはこの手のウェアラブルデバイスの真価が本当に発揮されるのはヘルスケアや未来予測、行動アシストの分野だと考えているからです。

前回の記事でも書きましたが、僕は軽度のアトピー症状について10年近く悩まされてきました。それが最近になってようやく「石鹸やシャンプーを止める」という行動の変化によってかなり改善したわけですが、冷静に考えると自分の身体の状態の変化が始まってから自分の行動を適切な(至ってシンプルな)状態に変えるのに10年近くもかかったわけです。しかもその間に通い続けた皮膚科の医師も適切なアドバイスをする事が全くできなかったのです。医師には僕個人の皮膚の状態を詳しく知る手段もなく、過去の医学的・統計的な常識が全てですから、そこから外れたことを実験的に試してみたり勧めたりできるわけがありません。その結果がこの10年なのです。

もし僕が毎日、皮膚の乾燥などの度合いを計測して数値として記録し、入浴の仕方・頻度などを含む日々の行動記録と共にデータ分析する事ができたら一年もしないで因果関係を発見し行動を変える事ができたかもしれません。

ここから学ぶべき教訓は健康分野においては個人の体質や状態に応じた適切な日常のケアが最も重要であり、そのためには個人の身体の状態と行動の変化に関連するデータをできるだけ多く収集し分析することが非常に重要であるということです。それは現在の医療の枠組みの中では限界があり、その限界を打ち破りかつてないほどのヘルスケア革命を起こそうとしているのがApple Watchなどのウェアラブルデバイスであり、その裏で進化するIoH (Internet of Human)の技術だと理解しています。

IoHは人間のあらゆる行動や状態についてのデータをネットに蓄積し活用しようという試みですから、データの内容次第でヘルスケアだけに留まらない様々な分野での活用も予想されます。特に行動パターンなどから予測した未来の結果に基づき、適切なタイミングで適切な行動アドバイスをデバイスが行うといった事も出来るようになるかもしれません。元気ハツラツで聡明な若者にとってはそれほど嬉しい事ではないかもしれませんが、自分の健康状態や判断能力の低下などで不安のある高齢者などにとっては力強い味方になってくれるでしょう。

そう考えるとApple Watchが爆発的に普及するために必要なキラーコンテンツは個人の蓄積した膨大なデータに基づき未来を予測し行動をアシストする「パーソナル人工知能」であると推測できます。それは今すぐではないにせよ、かなり近いうちに世に現れるのではないでしょうか。

今回発表されたApple WatchはIoH革命を巻き起こすにはまだまだ力不足であると言わざるを得ないと思います。まずバッテリーの持続時間が短いのは肌身離さず身に付ける相棒とするにはちょっと心許ない感じがします。主な機能はiPhoneに依存しているためまだ独立したデバイスとしての存在感は十分に示せていません。センサーももっと多様なものが必要だと思います。しかし今までのスマートフォンや技術の進化を振り返れば、これらの弱点はいずれ早いうちに解消していくだろうと思います。従って今春に発売されるApple Watchはまだ「買い」とは言い難いですが、今後の進化には注目、期待して良いと思います。

呼吸するように身につけている人のデータを休まず収集し続け、AIにより本当にスマートな(賢い)アシストができる端末に進化したころには、今のスマホのように誰もが身につけている当たり前のデバイスになっているのではないでしょうか?

コメント

タイトルとURLをコピーしました