アトピー性皮膚炎とフィラグリン

先日のNHKスペシャル「アレルギーを治せ!」を見た。

自分は重度ではないものの軽度のアレルギー体質で、鼻炎や部分的なアトピーなどの症状を子供の頃からずっと持っているので、やはり気になる話題だ。(幸い息子には遺伝してなさそう)

面白かったのは食物アレルギーの治療法について。
敢えてアレルゲンとなる食べ物を徐々に与えていき免疫に対しアレルゲンを攻撃しないように「慣らす」ことで完治させるという療法。これで98%の成功率とのこと。実際に取材を受けた少年はそれまで数mgの卵で反応が出ていたのに、その治療で卵一個を食べられるようになった。人間の体というのは本当に不思議だ。

アトピー性皮膚炎の話についてはそれほど目新しい話はなかったけども、重要なポイントがあると思った。基本的な治療法はやはりステロイドによる短期集中的な炎症抑制が最も効果的とのことだったが、敢えてこれを強調したのは、それまでステロイド剤に対する誤解が蔓延してしまったせいで、今も多くの患者が避けている実態があるからだろう。ステロイドは当然万能ではなく副作用がないわけではないが、正しい使い方を心がければ、それなりに効果があるのだろうと思う。(「正しい使い方」というのが一番難しいのだけど)

最新の研究成果によればアトピーの原因は皮膚のバリア機能を生み出すフィラグリンの異常によってバリアが壊れてしまうためであるという説明だった。この説はなんとなく聞いていたが個人的には疑問点もあった。20世紀以降の先進国を中心に患者が増えていることの説明になっていない気がしたからだ。

この説のポイントは「アレルギー反応」が先にあるのではなく「バリアの破壊」が先にあり、その結果として「アレルギー反応」が引き起こされるということだ。バリアが正常になれば、免疫の過剰反応も起こらないという説なのだ。アトピーはアレルギーであるという前提が固定観念としてあったので、こういった考え方は少し新鮮だった。環境要因とバリア異常のどちらが原因であるかはニワトリと卵のような神学論争になりそうだが、バリアを復活させることで症状を抑制できるのであれば、それに越したことはない。

研究者はすでに遺伝子に働きかけてフィラグリンの発現を促す新薬を研究しており数年後の実用化を目指しているとのことだ。本当にこの新薬に効果があれば画期的なことになる。

フィラグリン異常の人は昔から一定数はいたと思われるがそれまではそれほど問題にならかったが、先進国の生活環境が大きく変わり、アレルゲンに囲まれる機会が増えたせいで、アトピーとして顕在化した、という風にも考えることができる。だから環境要因がゼロとは言えず、それを取り除くことこそが本当の意味での根治なのかもしれない。ただ、それを取り除くことにかける労力とコストと我慢を強いられるのは患者本人なのだ。アトピーに生活環境変化が影響を及ぼしていることはほぼ間違いないが、じゃあ何をどう変えれば効果があるのか、そもそも変えることができるのか、は誰も分からないし、ほとんど手探りであらゆることをやって駄目だったという人がいったいどれだけいるのだろうか。そこに漬け込む悪徳な業者もわんさか居る。

そういった実情を考えるとステロイドの恐怖を煽ったり、闇雲に環境因子の排除を唱えるより、ステロイドの正しい処方を広めることやフィラグリン発現のための薬品開発を進めることの方が、患者にとってはよっぽど福音となるのではないかと思う。

コメント

  1. takekkun より:

    私も20歳過ぎてからアトピーになりました。

    以前は全くなかったのに体質が変わったのでしょう。

    私の姉は、逆にアトピーでなくなりました。

    これも体質の変化か。

    かゆいかゆい( ;´Д`)

  2. haj より:

    アトピーは年齢や環境、遺伝などあまりに多くの因子があるから混乱を招きんですよね。だから悪徳商法もつけ込みやすい。僕は十代•二十代は気にならなかったんですが、三十代になって再発しました。しかも典型的な顔面タイプでたちが悪いです。まあ新薬が開発される頃には治療してもしなくてもあんまり分からないくらいに老けてるんでしょうね。

  3. かこグランマ より:

    私も真剣に観たよ!!

    hajも観てくれるといいんだけどなぁ~…と期待しながらね…

    小さい時から、体質がアレルギーで、自家中毒、アトピーと、

    随分あちこちの病院を駆けずり回ったからね…

    病院の先生から「親のどちらかにアレルギー体質の人いませんか?」と聞かれ、

    「私がややアレルギー体質で、喘息や、鼻炎を引き起こしやすいです…」と答えたら、

    「あぁ‥やっぱり…こういうのって遺伝しますからね…」と言われ、

    愕然となって、諦めたわ…

    そのうち、成長と共に体力がついたら自然に治っていくだろうってね…

    確かに、あの頃は、「あんまりステロイド系の薬を使いすぎると、

    内臓に悪影響が出てくる」と噂が広がり、不安の方が先立ち、

    使い続けることができなかった…

    でも、あんまり症状が酷くなり痒がる時は、

    やっぱり不安は抱えながらも、丁寧に塗ってやってたわ…

    食物アルゲンの処方が面白かったね・・・

    「毒をもって毒を制す」という言葉があるように、

    やり方次第では、効果を上げるんだね・・・

    血圧の薬だってそう・・・

    薬を飲み始めたら、どんなに血圧が下がってきても、

    決して自分勝手にやめないことだって!!

    やめた為に、急に血圧上昇し、脳溢血等を引き起こすんだって…

    最近は、昔よく効いてた抗生物質も、病原菌によっては

    全く効かなくなってきたという話もよく聞くよね…

    敵(病原菌)も、然る事ながら、人間様の発明品に対し、

    菌自身を守るための抗体を作り始めてきたのかも…

    これからの時代は、現代という環境に耐えうる耐性の抗体を

    自分で作り出して行かねばならない時代になってきたのかも…

    大人になって突然出てくるアレルギーも最近は多いとのこと…

    いいことが復活するのは歓迎だけど、

    昔の病気は復活して欲しくないね…(^^;)

    体力が落ちてくると、一番弱い部分がまた出始めてくるのかなぁ~…

    良い先生がいる皮膚科にかかって、丁寧に治療して貰った方がいいかも…

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