韓国の李明博大統領の竹島(独島)訪問、香港の活動家らによる尖閣諸島上陸の事件など最近は領土問題がよく取りざたされるようになりマスコミもなにかにつけて騒いでいます。石原都知事は東京都が尖閣諸島を買うと宣言していますが、それに呼応する形で国も購入することを決定し、それが中国政府や一部の人達を刺激しているようで何らかの対抗措置を検討しているようです。韓国政府は国際司法裁判所への共同提訴を拒否するなどあくまで領土問題は存在しないという立場を崩していません。中国・韓国との外交関係は冷え切っており日本はアジア外交において、まだまだ乗り越えられない大きな壁があることを再認識させられました。僕は正直なところこれらの小さな島が歴史的にどちらの国に属するのかといった議論にはあまり興味がありません。率直に言って不毛な議論のようにも感じます。
「国の領土」とか「国境線」とか「排他的経済水域」とかいったような概念が一般的な庶民レベルまで広がったのは19世紀の国民国家の誕生以降だと言われています。国民国家は強力な権力をもってそれまでバラバラだった領土を統合し、「国民」という仮想概念を共有することで資本と人を集積し強力な軍隊を持つことで他国に植民地化されないこと、あるいは他国を植民地化すること、を目指していたわけです。だからそれ以前の領土支配というのは割と曖昧・適当なもので離島の小さな無人島なんてわざわざ軍隊を置いて守ったりするほど重要な意味があるとはみなしていなかっただろうし、そんなところをいちいち気に掛けている余裕もなかっただろうと思うのです。せいぜい地元の漁民が漁場として使っていた程度だったのではないかと。経済的価値についても今だからこそ地下資源や漁業権がどうのとかあるわけで、地下資源を開発する技術も知識もない、排他的経済水域といった概念もない当時の人々にとって、これらの島々の存在こそ知っていても、どれだけの意味を持っていたかは推して知るべしです。
だから近代化以前当時の記録を引っ張り出してくれば、双方何らかの微妙な記録くらいは出てくるでしょうし、植民地競争が始まって以降は国民国家を作っていくための領土拡大・統合を進める過程で早い者勝ちみたいなルールで実効支配に乗り出していった事実こそあるでしょうが、それらを根拠にした領土論争によって未来に向けた問題解決の糸口が見つかるとは到底思えません。戦後の国境線も一応国際的なルールに基づいているとは言え、当時の地政学的な事情に大きく左右されているため、その正当性については50歩100歩というのが僕の理解です。
こういった領土問題は毎度なんらかのニュースをきっかけにわれわれ一般市民が知り炎上するわけですが(これも今でこそ可能なことです)、こういった情報が報道などで特別に扱われる背後には様々な事情や思惑があるということを意識する必要があります。親日派と言われていた李明博大統領がこういった言動・行動を突然とり始めた背後には任期終了後に逮捕されることを恐れており、国民の人気を取り戻すのが目的である、という話はよく言われていますが、これは日本においても同じような現象と捉えることができます。特に求心力を失った民主党政権としてはここで強い態度を示すことで国民の支持を繋ぎ止めたいと考えるのではないでしょうか。尖閣諸島問題で勇ましい石原都知事や尖閣諸島に上陸した国会議員らなんかも、実効支配しているだけでは飽き足らず、わざわざ中国の世論を刺激して世界に領土問題の存在を広く知らしめている時点で、愚行にしか見えません。それでも彼らがこういった行動を繰り返し止めないのはなぜなか…やはり推して知るべし、です。人の耳目を集め、広告を売ることが商売であるマスコミも同類と見ていいと思います。マスコミにとっては領土問題が国民の興味関心の的であり続けることが重要なので、危機感や国民感情を煽るインセンティブがあります。
はっきり言うとこれらの事件が非常に大きな重要事項のように感じるのは、マスコミ報道や政治家の発言などの影響を強く受けているめだと思っています。僕は国境線なんて大したことない、と言いたいのではありません。現代世界は複雑で混沌としており、単純な理解や一面的な見方で国際的課題を解決し、乗り越えていくことはできないということが言いたいのです。鄧小平は1978年に来日したときに尖閣問題について「この問題は、しばらく置いてよいと思う。次の世代は我々より賢明で、実際的な解決法を見つけてくれるかもしれない」と発言し、それが事実上の棚上げにつながったとも言われています。これが政府間の合意であったかどうかなど細かいことは良く分かりませんが、当時のこういった見解というのはある意味、非常に現実的な判断であったと思います。民主党はマスコミや国民の弱腰論に押されながら「毅然とした」姿勢を示そうと頑張ってるみたいですが、なんだか逆効果のように見えます。先送りすれば良いと言うことではないですが、冷静構造が続く中で敢て領土問題を争点にせずに先送りし国交正常化を優先した自民党時代の方が(その動機についてはさておき)幾分マシのようにも感じます。
こういった話題がなくとも僕らは日々の生活をしなくてはいけないし、韓国や中国とは今後も普通に交流し、取引もします。マスコミばかり見てると中国や韓国の全国民が日本を敵視しているかのような錯覚を起こしますが、個人的なつながりのある人などからそのような話はあまり聞かないですし、たぶん、過激な人達はごく一部というのがあたっているでしょう。先日、妻は安くてデザインも良いと言う理由で韓国の子供服を購入しました。普通の暮らしとはこういうものです。
要するにこの手のニュースは耳半分くらいで聞いておくのがちょうどいいということです。
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このとおり、修復しましたのでお知らせします。
先日は、何度も試みたけどできなかったので、
今日はできるかどうかテストしてみます・・・
さ~てうまく進行してくれることやら・・・