なぜ投票率を上げる努力をしないのか

参議院選挙が終わり大方の予想通りの自民党圧勝というつまらない結果となりました。投票率が5割程度で一票の格差も放置してるので、これをもってして自民党が国民の圧倒的支持を得たととらえるのは無理があるかと思います。今回の選挙の動向と世間を見ていてなんとなく感じたのは政治への関心の薄れと世代間の分裂が想像以上に進んできているんじゃないかということです。ネット選挙活動が解禁された初の選挙でしたがなんとも盛り上がりに欠け、争点も政策も理念も曖昧なまま予定調和の結果に落ち着いた感があります。若い人の投票率は相変わらず低いままであり、投票によって社会に何らかの影響を与えようという熱気は感じられません。

若い人達が投票しない事で日本の抱える課題のツケはひたすら先送りにされて次世代に積み増されていることは、もう誰でも知っている事実ですが、そういった警鐘も当の本人達にはただの小うるさい説教のように聞こえているかもしれません。政治が自分の暮らしにどれだけ影響を及ぼすものであるかはある程度社会人経験を経ないとなかなか実感として湧きづらいので、エネルギーに溢れ余暇も学業も仕事も何かと忙しい若い人達が、それらより投票を優先する動機を見つけるのはなかなか難しい事だと思います。まして2009年の政権交代の結果がアレだと政治を云々するのは若い人でなくとも時間の無駄のように感じるかもしれません。

僕も20代で猛烈に働いていた頃は連日の残業に休日出勤など日常茶飯事だったので仕事で投票を棄権した事もありました。平日じゃ時間が足りないから休日出勤してるわけで期日前投票なんてのも意味はなかったです。当時からずっと感じているのはこれだけIT技術が凄い勢いで進歩しているのにどうして電子投票が実現出来ないんだろうかという事です。技術的には10年前でも十分可能ですが、いまだに選挙活動が微妙に許された程度。普通に会社などで働いていれば仕事の現場のIT化は日々進化しているのを感じると思いますが、それだけにこのギャップに呆れてしまうのです。本末転倒とお叱りを受けるかもしれませんが、電子投票が実現すれば自分のようなケースの人にとってはありがたい事で投票率はもう少し上がるはずです。投票率があがれば候補者にとってもマーケティング戦略が変わります。これはITだけの問題ではなく選挙期間が異様に短い事なども投票率が上がらない要因の一つだと思いますがこれも変えようという話はありません。

この疑問に対する自分なりの答えはこうです。民主主義には本音と建前があって建前では理念としての民主政治を支持しているけども本音では全ての国民が簡単に気軽に投票出来るような世の中を望まない人達が多いのです。そういう人達にとってITが代表するような「気軽さ」「簡単さ」というのは「軽薄さ」「思慮の浅さ」というネガティブイメージにつながっており、彼らは電子投票のような仕組みの導入には様々な理由を挙げては頑なに抵抗します。投票率が上がる事は民主主義の理念からすれば大変良い事のはずなので、電子投票で投票率が上がるのならそれを実現するために課題を解決する方向に考えれば良いだけなんですが、投票率の問題はあくまで投票しない人達の責任と考えており、そんな「意識の低い」人達のためにわざわざ策を考えて実行する事には価値を感じないわけです。それどころかそんな事をすれば「衆愚政治になる」とすら考えているかもしれません。(そもそも「衆愚政治」とは何かを問うのは簡単ではない。)

僕はこういった考え方は間違っていると思います。意識を高めることももちろん大事ですが仕組みが変わり政治参加に対するフィードバックがもっとオープンになれば人々や政治家の考え方や行動も変わるはずです。

このままでは若い世代の政治離れを加速し世代間の亀裂を益々広げていく恐れがあります。高齢者は政治的には保守的な選択をしやすいので政治家との強力な関係を築くことに腐心し政治家もそれに応えることに腐心すればその輪はますます閉じられていきます。かたや若い人達はネットというグローバルなシステムの中で気軽に横につながり国境を超えたゆるい文化を徐々に形成しつつあり、国家や政治に対する失望と共に政治参加への意欲や動機を失いつつあるように見えます。

若者の政治•国家からの離反は今はまだ単なる仮想空間の戯言という形でしか表出していませんが、そのうち何らかの形で組織化し始めると実体経済や政府の権力基盤すら揺るがすことになるのではないかという気がします。そんなこと日本ではあり得ないと思うかもしれませんが否応無くグローバル化にさらされた若者に果たしてその常識は通用するでしょうか。

対立からは明るい未来は描けません。しの後の言わずにまず投票率を上げるために出来ることは何でもやるという努力をすべきです。

コメント

  1. かこグランマ より:

    若い時は、どうしても政治には興味が持てないんだろうね…

    自分達だって、本当に興味を持ちだしたのは、ずっと後になってからだもんね…

    やっぱり、社会人になって、少しづつ社会の仕組みが解ってきて、

    不満を持ち始めると、社会を動かしている政治に興味を抱いていくのだろうね…

    若い時は、只、今を生きることに目一杯なんだろうね…

    棄権する人は「自分一人ぐらい棄権したって、対して影響ないさ…」と思う若者が殆どなんだろうね…

    今は熱くなる若者は「ダサい!」という風潮だから、

    事勿れ主義の三無主義若者が蔓延してるのかも…

    そして文句ばかり言って、自分が少しでも世の中を変えたいと行動はしない…

    若い人達に「世の中を変えるのは自分たち一人一人の行動なのだ」という意識を植え付けさせる教育をやってこなかったツケなのかも…

    時々、チタにもそういう話するんだけど、

    まだまだ、自分の身の回りのできごとやゲームのことで精一杯というところかな…?!(^^;)

    相変わらず勉強はせんし、テスト前だろうと教科書は全部学校に置いてるし、

    どういう事に興味があるのか、さっぱり解らん…

  2. haj より:

    >かこグランマさん

    この記事で言いたかったことは、若い人の意識が政治に向かないのも問題なんだけど、そのことに対して何もやってこなかった大人世代や政治家、政府、官僚の責任は重いってこと。何もやらないどころか、むしろ若い人が政治に興味を持たないように仕向けているんじゃないかとすら思う。

    若い人がまず感じるのは学校の授業で習う民主主義の理念とテレビで報じる実際の政治の現場のあまりのギャップ。そこですぐに民主主義というのが建前で塗り固められた理念に過ぎないことを直観的に感じ取る。若いうちはそんな混沌として理解不能な光景を前ににして興味を持てる方が余程変わってる。

    でも2009年にはあれだけ投票率が上がったんだから「政治は変えられるかもしれない」という期待感があれば若い人も政治に参加するはず。そういう「結果はどうなるか蓋を開けて見るまでは分からない」という流動性を徹底的に排除したのが日本の政治システムなんじゃないだろうか。自民党の構成員の理念がバラバラなのも、そもそも政党が理念を代表してない、ただの政権クラブだから。出来るだけ変わらない変えられないように作られた仕組みなんだよね。

    親がなんでも子供の選択を決めていたら子供は何も考えずに自分で決めなくなる。そういう大人のエゴのようなものを日本の政治システムには感じるんだよね。本当の民主主義はまだ実現していないと言って良いんじゃないか。

    ちょっと熱くなりました。

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