あまり明るくない話題で恐縮ですが懲りずにこの話題を続けます。
前回記事の最後に政府に考えて欲しいことをあげましたが、僕はこれらが日本や欧米などの先進国経済が成長しなくなったりデフレが続いたり格差が広がっている理由だと思っています。というか常識だと思っているのですが政治の世界ではそうでもないようです。
1.新興国の成長で安い商品が流入し、労働力も新興国に頼るようになることで国内の商品・労働力が供給過剰になり価格や賃金が低下する。
2.ITを初めとするテクノロジーが従来人間の行っていた一部の仕事を不要にしつつあり、余剰人員を抱える企業は賃金を抑制する事で凌いでいる。
3.経済成長とエネルギー消費には強い相関があり、大部分を原油に頼っている現状で原油産出量が減少すれば経済停滞もしくは後退を余儀無くされる。
これら3つの共通点は第一に自然な流れでありこの流れそのものを問題視したり抵抗する事は出来ないという事です。新興国に商品を作るな、自分達に売るなと言うのは実に勝手な主張ですし自分達も新興国にものを売る事でなんとかもっています。テクノロジーは知識、情報なので誰かが使うのを止めようと言ってみたところで別の誰かが使う事を簡単には止められません。原油は限りがあり遅かれ早かれ枯渇するし需要はうなぎ上りです。
従って「強い日本を取り戻す」といった呑気な事を言っている場合ではなく、人間がこの地球でサバイバルしていく方法を真剣に考えなければいけない時期に差し掛かっているのではないでしょうか。そういう視野で叡智を集めて問題解決にあたることこそ政府に求められる役割だと思うのです。
2 についてもう少し説明して見たいと思います。
僕は製造業に身を置いていますが、近年は生産プロセスや品質管理の自動化は重要なキーワードになりつつあり、実際自分の仕事にも少なからず影響しています。自動車工場のロボットなど昔から自動化技術はあるのですが、現在の自動化はより複雑化、多機能化、知能化、そして低価格化しておりその適用範囲はどんどん広がっています。なによりITの猛烈な進歩が寄与している面が大きいと思います。
人工知能も一般化、高度化しておりあと10~20年もすれば、自律的に行動できる賢いロボットが実現しそうです。すでに中小企業向けの人型産業用ロボットは実用化しており、新興国の安い労働力に対抗する動きが始まっています。大量の労働者を集約して受託生産をしているFOXCONN(iPhoneの生産やSharpへの出資の申し出などで話題になってるとこ)ですら自動化への動きを始めており、この流れは加速しています。またネットの進化は確実に20世紀の花形産業を衰退させつつあり、新聞、テレビ、出版、小売などの収益を圧迫しているのはもはや誰の目にも明らかです。
この流れがもっと進むならば当然ながら賃金の減少や失業を生む可能性が考えられますが、問題はそれを止める事が出来るだろうかという事です。正直僕には限りなく難しいと事のように思えます。それよりはこの流れの行き付く先をしっかりと見据えて、どう社会を適応させていくのかを今から真剣に考える方が有益のように感じますし、それこそが政府の仕事だと思います。セーフティネットを強化したり効率的な所得再分配を目指したり新しい事業創造と労働力の移動が起きやすい環境を整備するなども一つの考え方だと思います。現実逃避を続ければ歪みを蓄え続けることになり、大きな痛みを伴う事態になるかもしれません。世の中は未踏の世界に踏み込みつつあるので、従来の経済学や社会学の枠組を超えた発想が必要ではないでしょうか。
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