20世紀に日本を代表していたMade In Japanは家電、自動車、半導体などでしたが、21世紀になってこれらの業界は激しい競争にさらされて今や埋没しつつあります。一方で他国に真似出来ないMade in Japanとして台頭してきたのがアニメや漫画などのコンテンツ産業で世界中の(特に若者の)支持を受けながら、地道にしぶとく浸透・伝播しているようです。その中でもサブカル、とりわけオタクコンテンツの人気は計り知れないものがあります。
昨日公演を終えた香港での初音ミクLIVEは大盛況だったようで、土曜には台湾でも開催されるそうです。流暢な日本語で一緒に歌っている痛く純粋な彼らを見ていると尖閣諸島をめぐる激しい対立などはどこか遠くの世界のできごとのような気がしてきます。もはやオタクという言葉は世界共通言語となり、その裾野も幅広く境界も曖昧になってきていることから、この言葉だけでは表現できない多様な生態系になってきました。この手のコンテンツで面白いのはプロモーションのための戦略や国の支援など一切ないところから、ネットなどを通して能動的・自然発生的に沸き起こり、意図してないのにどういうわけか世界の(一部の)人々を魅了しているところ。むしろ規制や補助金などとは無縁だったからこそ、自由で冒険的な空気に満ち、クリエイティブな有象無象の人材が集まり、これだけのパワーを生み出しているのだと思います。また、日本は法の上での自由はあっても「空気」による支配が強い社会なので、その反動がこういう自由な産業に潜在的な力を与えているのかもしれません。イギリスのロックみたいなもんじゃないかと(?)。
政府はコンテンツ産業も成長の柱として育てていくことを目論んでいるようですが、「どうか邪魔をしないでほしい」と言いたいです。過去の政府の産業政策で長期的に成長の効果があったものはほとんどなかったという学者の研究結果もあるそうです。それよりこれらのコンテンツを自らの利益も省みずに情熱だけで生み出し続けている若きクリエーター達がちゃんと食べていけるような労働環境の整備をもっとしなくてはいけないと思います。今の日本の制度は会社勤めの正社員だけが優遇される仕組みであって、これらのクリエーター達はその枠に押し込めるはずがありません。もっと柔軟で公正な制度が求められていると思います。公務員制度はがっちり現状維持してコンテンツ産業だけ育てようなどと考えているようでは何も生まれないでしょう。
初音ミクはボーカロイドという完全にバーチャルな存在であり、ソフトウエアには国境も人種も民族もありません。いろいろ難しいようですが、もし多言語対応すればボーカロイドが日本で生まれたことはそれほど重要ではなくなり、世界の初音ミクになるかもしれません。領土問題もオタクのパワーで超越していけるのではないかという妄想が膨らみます。
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