昨年の政権交代によって自民党政治に終止符が打たれたことはとっても喜ばしいことだと思う。旧態依然とした魑魅魍魎の政治から少なくとも一歩前進したのではないだろうか。今でもあの自民党政治時代に戻りたいなどとは微塵も思わない。圧倒的多数を民主党が獲得したことの意味は「このままでは日本は大変なことになる」という国民の危機感が共有されてきたためではないかと思う。そういう意味では国民の意思は一致しており、小泉政権誕生のころから大きく変わっていないのではないだろうか。
しかし、政権が変わったことで世の中がすぐさま良くなるわけでもない。個別の問題については解決が困難な難題が積み上がっているため、政権は実際に何かをしようとすると利害関係者の怒りを買うことになり度々批判にさらされることになる。特にマスコミは旧来型の政治を引きずっていて偏向的な報道が多いから、政権はますます「世論」を名乗るマスコミの圧力に敏感になってきているようだ。
政権が交代して半年、はじめこそ今までとは違う政権運営の様子が印象に残ったがその後の動きを見ていると抜本的な改革に手をつけることに二の足を踏んでいるようにも見える。また、選挙前のマニフェストが足枷になりつつあり、そのことが政権の基盤を揺るがし始めている。民主党はマニフェストの早期実現こそが次の選挙に勝つ唯一の道であると考えているようだが、そのために90兆を超える史上最多の国債を発行するのでは、本末転倒ではないだろうか?財源の確保ができないのであればそのことを正直に詫び、マニフェスト実行の延期、さらなる歳出削減と税制改革の道筋を示すのが筋だと思う。藤井元財務大臣は国民の信頼を得るまですぐには増税はしないと何度も強調していたが、であるならば国債に頼るなどはもってのほかだと思う。なぜならそれは今の散財のツケを将来世代に負担させているだけだからだ。それでなくとも90年代以降、世代間の経済的格差は広がる一方なのにさらに次の世代にツケをまわしてしまえば若者や子供にはもはやお先真っ暗な世の中しかない。自分の子供が大人になったときのことを考えると心配で仕方がない。
世の中には日本の国債はまだ大丈夫だ。経済成長すればずっと発行し続けることも不可能ではない、みたいなことを吹聴しているエコノミストもいるが、危険な言説だと思う。また、お金をたくさん供給してインフレを起こせば経済は復活するといったことを力説する人もいるがこれもまったく信用できない。日本は抜本的な改革抜きにふたたび経済成長するようなことはまずないと思う。
今やるべきは日本の制度や仕組み慣習、法律が完全に時代遅れになってしまっていることをひとつずつ地道に変えていく作業だと思う。その過程は昔からの既得権にメスを入れることになるだろうから、相当な反発も想像できるが、それは避けては通れないと思う。その中で政府の効率化が幾分進めばいずれは民主党の掲げるような政策が実現できる日もくるかもしれない。
民主党が地道な変革をできなければ、いずれ国債は暴落しハイパーインフレのような悲惨な結末が来るかもしれない。それも今の現役世代のツケを後回しにしなくてすむという意味では自業自得で済むだけマシなのかもしれないが…。
コメント
確かに延命治療ではなく、切開してでも完治してもらわないとね。
今の日本は、まるで火事になったビルの上層階で助けを待っている感じかもしれませんね。
既に煙が入って来て、ただ待ち続けるのか、逃げる方法を考えるのか、逃げた人の間で意見が割れているという感じでしょう。
わたしは、これは民主党だけの問題ではなく、政治を育てる国民の問題でもあると思います。
1930年代に日本が進むべき道を根本的に踏み外したようなことが起こらないことを願います。
本とに貴方の言う通り、私も、民主党は折角政権を奪還できたのに、
マニフェストに拘りすぎたり、マスコミの突っ込みに右往左往したり、
増してや、小沢さん、鳩山さんの金銭問題などで、足を救われつつあり、
もうグラグラした壊れかけた橋を渡っている様に、ハラハラして
見守ってるわぁ~・・・(^^;)
国民も、余り急に変化を求めすぎずに、焦らず、長い目で見てやり、
少しづつ改善していってくれれば・・・と思っているのにね。
北欧社会だって、そう簡単に今のシステムに変化したんじゃないんだもの・・・
少しづつ少しづつ、ほころびを繕うように、改善していって、
より良き社会に何十年もかかってなって来たんだもの・・・
もう今更、元の自民党には変わって欲しくな~い・・・(*~*;)
●Choiさん
今はさしずめ五・一五事件の直前といった感じでしょうか。国債発行額ではすでに「戦時」に近い水準になってますが。
民主党は政権交代を明治維新になぞらえていましたが、どちらかというと幕末の慶応の改革に近いのではないかと…。明治維新では結局攘夷派は駆逐されていきましたが、1930年代ではむしろ内向きの勢力が幅を利かすことになりました。最近はそういう傾向も見え隠れしている気がします。
昔のような軍事クーデターが起こることはあまり考えにくいですが、全体的に間違った選択をチェックする機能が働かずに突き進む国民性はそう変わっていないのではないでしょうか。
●かこグランマさん
北欧社会が高福祉の社会を実現できているのは政府の機能が明確で効率化されているからだよね。日本じゃ定額給付金を配るために人権費で数百億のお金がかかるし、所得で給付を制限しようにもそのための情報も一元管理できてない。
あと、北欧福祉国家は政府の保護が厚い分企業の担う役割がシンプルで日本より雇用が流動的だったりする。日本は企業が福祉の一部を担うから、正社員だけが保護される差別的な仕組みになっていてなかなかそれを変えられない。卵が先か鶏が先かの議論になるけどそこにも手を入れないことには「格差の是正」なんてできないんじゃないだろうか。